秋の牢獄
本日11日7日に読みたい作品。
例えば「秋の夜長にオススメ」とか「夏に読みたい作品」とか・・・季節に絡めたオススメ本というのはあるかと思いますが、日付指定でオススメしたい作品は珍しいのではないでしょうか。
そんなわけで今日読むために図書館から借りてきました。
作品のテーマは【囚われる】。
表題作を含めた3篇の短編集です。
1.『秋の牢獄』
大学二年生の女性である私は、突如として、11月7日を延々と繰り返す謎の現象に陥ってしまった。どの場所で何をしていても、夜が更けると11月7日の朝の状態に戻ってしまうのだ。途惑っていた私だが、やがて、隆一という青年を始め、同じ現象に悩まされているリプレイヤーと呼ばれる仲間たちと出会い、年齢も職業も様々な彼らとの交流を楽しむ。しかし、北風伯爵という異形の存在が、仲間たちを一人、また一人と消し去ってゆく。
(Wikipedia参照)
いつも通り大学へ行き、友達とお昼を食べながら他愛ない会話をして、家に買ってご飯を食べて、お風呂に入って寝る。
そして目が覚めたら同じ日が繰り返されていたとしたら・・・
自分以外は同じことの繰り返し。
歳をとることもなく、いつまで続くのかもわからない状況だったら。
最初は主人公の藍のように、毎日自分の好きな事を過ごしながら遊ぶんだろうなと思うけど、
それが何回も、何十回も、何百回も続くことになったら・・・きっと耐えられないだろいうなと思います。
一番怖いなぁと思ったのは、藍と同じく11月7日を繰り返す仲間である犬飼さんのように誰かを殺してしまった場合。
憎くて殺した相手がいても、寝て目が覚めたら何事もなかったかのようにそこに存在する・・・背筋がぞっとしました。
この作品は【時間】に囚われる物語でした。
2.『神家没落』
●あらすじ
春の夜に公園に向かって歩いていたぼくは、普段は見かけない藁葺の民家に足を踏み入れる。そこにいた翁の面を被った老人は、この家は自分の村で代々受け継がれてきた神域だが、継承者が絶えて自分は取り残されてしまったと語り、家守の役目を強引にぼくに譲って消失してしまう。家の周りには結界のようなものが張り巡らされていて、外に出ることはできない。閉じ込められたぼくが途方に暮れていたところ、視界が闇につつまれ、やがて闇が晴れて光が戻ると、外の風景が一変していた。この家は規則的に日本全国を移動する性質を持っているのだ。(Wikipedia参照)
突然家守の役目を背負い、その家から出られなくなる。
自分が出るためには他の人に受け継いでもらうしかない。
ガスも電気も水道もない娯楽もない質素な生活。
そして同じ場所に佇むのではなく、全国を転々と移動する不思議な家。
買い出しにも行けず、食べる物は残った食料と庭になる果物。
そして移転先の村人から差し入れてもらうくらいしか手段がない。
外界とも連絡は取れないので完全に社会からかけ離れた自由な生活はできるけど、家から一歩も出ることができない。
例えばデジタルデトックスをするために数日間だけ外界から遮断するという事だったらできそうですが、ずっとは辛いですね。
今度は【家】に囚われるお話でした。
3.『幻は夜に成長する』
●あらすじ
不思議な力を持つ私は、ある教団によって山寺のような所に監禁された上に、暴行・薬物投与・洗脳を受けて無理やり教祖のような役割を負わされ、悩みを抱える人々の相手をさせられていた。わたしは、密かに自分の中に怪物を抱え、それに対して人々の地獄を餌として与えることによって大きく育てつつあった。(Wikipedia参照)
3篇の中で個人的に一番好きだと思った作品です。
幼い頃に幻術を使える祖母に育てられた少女リオ。
周りからは気味悪がられ住んでいる家を焼かれてしまい、同時に祖母も姿を消してしまいましたが、
本当の両親と再会しあの祖母は本当の祖母ではなく、海に行ったときに攫われてしまったという事実を知ります。
その後平穏な生活を過ごしていたかと思いきやリオの幻術の能力が開花し、彼女の運命は歪んでいくことになります。
リオによる幻術の美しさと、それを利用しようとする人間の大人の汚さの対比がとても良く描かれています。
教祖として日々を過ごす彼女の能力は更に進化し、そこから逃げ出すことができるのほどになりますが・・・
果たしてその後はどうなったのでしょうか。
最後は【幻想】に囚われる作品でした。
全編に言えることですが、物語がバシッと完結するという訳ではなくその後を読者に想像させる余韻を残す終わり方になっています。
秋の夜長にそれを考えて過ごすのも良いかもしれません。
では最後にこの本のお供。
アルフォート(マロン)×珈琲
珈琲にはラムキャンディスを少し♪
美しくも少し恐ろしい物語に酔いしれることができます。
そして秋っぽくアルフォートはマロン味(笑)。