黒猫の本棚

本と、作品に合うお供たち。

黒いカーニバル

 

秋から肌寒くなってくる今の季節にぴったりだなと思った作品です。

 

『黒いカーニバル』/レイ・ブラッドベリ

 

 

ブラッドベリの作品は今までで『火星年代記』『ハロウィーンがやってきた』の2作のみですが、独特な世界観やブラックユーモアが秀逸で、

どことなく星新一を彷彿させるなぁと感じた作家さんです。

 

この作品はブラッドベリ初期の作品がつまった24編の短編集となっておりますが、

中には見開き2ページのショートショートもあったりして楽しめます。

 

厳選にかなり迷いますが、この中で印象的で気に入った作品を3つ挙げたいと思います。

 

1.『黒い観覧車』

とある町にやってきたサーカス。

そこにある黒い観覧車は時々逆向きに回るという不思議な事が起こります。

団長の男がそれに乗り込んで数周回ると・・・

 

観覧車から降りてきたのは10歳ほどの少年でした。

それを目撃した町の少年2人が正体を暴くために後を追いかける一晩の冒険物語です。

 

団長はどこへ行ったのか。逆向きに回る観覧車の正体は。

もちろんこれだけで予測がつくとは思いますが、あえて何も言いません。笑

 

十数ページの短編ですがしっかりとしたダークファンタジーを堪能できました。

1番始めに載っている作品もあって「あ、こんな感じの作風なのね」というのを一瞬で理解できる先制パンチをくらった感覚でした。

 

 

 

2.『青い壜』

これは冒頭の文章からなんとなく心をつかまれました。

 

真白な小石となって砕けちった百千の日時計。岩と砂の悠久の空に埋もれ、もはや歌うこともない小鳥たち。風のかたる併呑の昔話にさそわれて、死んだ海の底を流れる陸地の砂塵。ありあまる時を沈黙の穀倉にたくわえ、平安と追憶の池や泉のあいだに横たわるあまたの都市。

火星は死んでいた。

(本編より抜粋)

 

舞台は廃墟と化した火星。

そこで【何でも願いが叶う青い壜】があるという噂を聞きつけ探し始める青年たちの物語。

【死】とは何か、【幸せ】とは何かを考えてしまう作品でした。

青い壜を手にした者は幸福を得ることができる。

しかし同時に不思議な死を遂げることになるという・・・

それでも人はその幸せや願いを求めてそれを探し続ける。

人とはそういうものなんでしょうかね。。。

 

 

3.『戦争ごっこ』『バーン!おまえは死んだ』

 

2つの作品ですがお話が続くので一緒に。

 

友達と戦争ごっこをして遊んでいた子供時代。

その心を胸にしたまま、本当の戦場でも戦うことになる青年のお話。

 

昔は手で銃の形を作ったりした「バーン!」と口で言いながら相手を倒すフリ、やられたフリをしていた思い出と、撃たれたら死ぬという本物の戦場の非情な現実との対比の描写が素晴らしいなと思いました。

 

心が子供のまま、あくまで戦争ごっこに参加していると思い込んでいるジョニー。

「銃弾なんて避ければ良いんだよ!」といってスキップのような軽い足取りで戦場を駆け抜ける彼の姿がとても印象に残りました。

 

 

今回の読書のお供

 

ということで今回のお供は、

 

 

ドライフルーツ入りスパイスケーキ×赤ワイン

 

 

スパイスケーキは業務スーパーで購入。

24もの作品が詰まっていて、まさにカーニバルを観に来たかのような一冊にぴったりだと思いました。

ワインはアルゼンチンのマルベック。

果実味があって少しスパイシーな感じが作品にもケーキにも合いました♪